会社法:株主の権利行使に関する利益供与 その3

120条4項 株式会社が第一項の規定に違反して財産上の利益の供与をしたときは、当該利益の供与をすることに関与した取締役(委員会設置会社にあっては、執行役を含む。以下この項において同じ。)として法務省令で定める者は、当該株式会社に対して、連帯して、供与した利益の価額に相当する額を支払う義務を負う。ただし、その者(当該利益の供与をした取締役を除く。)がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合は、この限りでない。

利益供与が行っていた場合、当該利益供与をすることに関与した取締役・執行役は、株式会社に対して連帯して、供与した利益の価格に相当する額を支払う義務を負う。

これは、禁止される利益供与が行われた場合、利益供与を受けたものに対する利益返還請求権(120条3項)があるので会社には原則として損害がなく、取締役などに対して損害賠償を請求できないことになる。
↓しかし
実際問題として、供与した利益の返還を受けることが極めて困難である。
↓そこで
会社が120条3項の利益返還請求権を有する場合であっても、取締役などに対し利益相当額の支払い義務を認める必要がある。

また、このような責任を取締役に課すことで、取締役が利益供与を行うことの抑止が期待できる。

利益供与をした取締役を除く、利益の供与をすることに関与した取締役等は、その職務を行うことにつき注意を怠らなかったことを証明すれば、責任を免れる。

これは、無過失責任を負わせるまでの合理的な理由がないため。過失責任としている。

しかし、利益供与を直接行った取締役等については、無過失責任を負う

利益供与を直接行った者についてまで過失責任とすると、取締役のコンプライアンス意識の低下を招くから、誰かには確実に責任を負わせることにして、抑止を図っている。

120条5項 前項の義務は、総株主の同意がなければ、免除することができない。

取締役等の利益相当額支払い義務は、総株主の同意がなければこれを免除することができない

この責任は、単独株主権(1株でも持っていれば行使することができる権利)である株主代表訴訟により追求されるものであるから(847条1項)

取締役等の利益相当額支払い義務は、取締役等の任務懈怠責任(423条)とは異なり、責任の一部免除(425~427条)は認められない。

これは、利益供与は反社会性の高い行為であるため。

また、一部免除だと会社の資産は浪費されたままであり回復されないから。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする